春に嬉しい、私に嬉しい、菜の花の薬膳。
好きな野菜は何か聞かれたら、なんて答えますか?
メゾンドメグリの管理栄養士、ワインソムリエのやまぐちあつこ(まぐ)です。
実は私の好きな野菜のかなり上位に菜の花がランクインしてきます。
超めんどくさがりやで、疲れやすい、家帰ってきたらバタリと寝る私が、菜の花を湯がいてからし和え作ることをめんどくさいと思わないぐらいには好き。(どういう表現?笑)
お肉とも合うし、魚介とも合うし、大好きなパスタにしてもおいしいですしね。あと、ニンニクとも合うし。おっと、料理妄想が広がりすぎてしまいそうなのですが、今日はそんな菜の花の薬膳&栄養のお話です。
なばな?なのはな?
実は菜の花というのは色々な野菜の総称です。菜の花とも菜花(なばな)ともいいます。
具体的には、アブラナ科の黄色い花を咲かせる野菜の総称。なじみ深いものだと、チンゲン菜や小松菜がその一つです。つまり、小松菜の菜花もあるんですね。
よく束ねて売られているのは食用として品種改良されたもので、程よい苦みが特徴です。私自身イタリアンレストランで働いているのですが、この一般的な菜の花は12月から使い始めます。
春の野菜、というイメージはありますが黄色い花の咲く菜の花畑が思い浮かぶような温かい季節になるともちろん旬は終わりです。

その花の咲く前が食べごろですからね。シェフいわく、花が咲き始めるような春先よりもまだ寒い時期の方が柔らかくておいしい、とのこと。是非今食べたい!
最近はオータムポエム(アスパラ菜)やコウサイタイをスーパーで見ることもあります。


これらは中国野菜の仲間で、比較的苦みが少なく、花のつぼみというよりは茎や葉を食べるイメージです。イタリアンのお店ではイタリアでもよく食べられるチーマディラーパを使うこともあります。

ちなみに菜の花は地中海地方原産と言われており、イタリアでもよく食べられる野菜のひとつです。
菜の花の旬の話
12月末頃~3月頃が旬。花が咲く前、というのがポイント。花の柔らかさと程よい辛味と苦みのバランスを楽しむには、早めに食べたいところ。
薬膳的な効能 春に嬉しい菜の花
五味:辛味
五性:温性
帰経:肝・肺・脾
薬膳的なはたらき
肌のできものや血の巡りの悪さ、肌のくすみや便秘を改善すると言われています。具体的には
解毒:体内の老廃物や毒素を取り除く
活血・化瘀:血行を良くする、ドロドロ血の改善
通便:便秘の改善
消腫:はれ物、ニキビやできものをとる
という効能があると言われています。
春は漢方的には、芽吹きの季節。やる気がメキメキ出てくることはいいのですが、冬にため込んだいらないものも体に出てきやすい季節。そう、吹き出物なども。
そんな時にこの活血、化瘀、消腫などのはたらきがあると、血行を良くしてくれて顔色もよくなり、吹き出物などをとってくれる…と思うと、つい食べたくなりますね。
栄養学的には?栄養たっぷりの緑黄色野菜
33kcal/100g(約1/2束)
たんぱく質 4.4g
脂質 1.8g
炭水化物 5.8g
そして、これらの栄養素が多く含まれます。
βカロテン、ビタミンA(脂溶性ビタミン)
このβカロテンという色素成分の含有量が、淡色野菜と緑黄色野菜の区別をするポイント。緑黄色野菜である菜の花にも多く含まれます。
βカロテンは抗酸化作用を持ち、免疫力の強化や糖尿病、癌、動脈硬化などの現代人を悩ませる病気の予防に効果があると言われています。
βカロテンは体内で必要に応じてビタミンAに変化します。ビタミンAは皮膚や目・粘膜をすこやかに保つので、成長や発達、そして視力に必須のビタミンです。薄暗い所でだんだん周りが見えてくるのは、このビタミンAのおかげ。
ビタミンE(脂溶性ビタミン)
食品の酸化防止剤として使われえることもあるほど、油脂の抗酸化作用があります。
油脂、というとざっくりしていますが、ヒトの体を構成する細胞の膜も不飽和脂肪酸という脂質からできています。その酸化を防ぐことで、血管を健康に保ち、脳梗塞や動脈硬化を予防する作用があると言われています。
薬膳的な効能である「ドロドロ血の改善」にもつながる作用ですね。
ビタミンC(水溶性ビタミン)
ビタミンCは体内で合成も貯蔵もできないので、食べて摂るしかない栄養素のひとつ。また、コラーゲンを生成するときに不可欠なビタミン。コラーゲンは肌のハリを保つほかに、骨や皮膚、血管をつよくするために必ず必要な成分です。
ほかに、抗ストレスホルモンと言われるコルチゾールやアドレナリンの合成を助けるので、ストレスがかかるとビタミンCの必要量は増えます。また、ビタミンCにはアルコールの分解を助ける働きもあります。
メラニン色素(しみやそばかす)の合成を抑えたり、鉄の吸収を助けたり…なくてはならない栄養素です。
ビタミンK(脂溶性ビタミン)
血液の凝固に関わり、不足すると血が止まりにくくなります。骨の形成を調節したり、動脈の石灰化を抑えるはたらきもあります。
葉酸
動脈硬化の予防、コレステロール値の低下、皮膚の健康維持などの作用があります。また、赤血球をつくったり、たんぱく質とDNAなどの合成に必要な栄養素のため、貧血の症状のある方は不足しないようにしましょう。妊娠、授乳中はこのたんぱく質やDNAを合成する、という力が普段よりもずっと多く必要なので、特に不足しないよう注意が必要です。
薬やサプリメントと違って、菜の花を食べれば必ずこの効果がある!というわけではありません。が、バランスよく季節の食材を摂ることで、日々の健康維持に役立つことがわかりますね。
菜の花の薬膳料理
記事を書いている私は、漢方的には「血の巡りが悪い」体質。
そんなわたしには今回の菜の花はぴったり。
イライラしがちな春には摂りたい柑橘類と併せて、パスタにしました。
ぶりと金柑、菜の花のパスタ

レシピは準備中。
ほかに、例えば、菜の花×卵は、私にうれしい組み合わせ。アミノ酸スコア(体の中でアミノ酸が効率的に使えるかどうか)が100で栄養価の高い卵も気軽に摂れて、最高ですね。
私は菜の花のみそ汁に少しだけ柚子胡椒を入れるのが好きです。合いますよ。ぜひお試しください。
▼レシピ例▼
菜の花と同じ春の食材で、血の巡りの悪い私にうれしい「活血」の効能がある玉葱、特に今美味しい新玉葱を組み合わせれば立派な薬膳。
サバやイワシも同じ「活血」のはたらきがあるので、サバ缶などを合わせてもいいかも。
▼レシピ例▼
食べられるときに食べとけ!春に必須の菜の花。
今回は菜の花のはたらきを、薬膳的な目線と栄養学的な目線からまとめてみました。ただ単に「春を感じておいしいよねー」と思っていた菜の花が、自分にとってうれしい効能があると知ると、スーパーで見かけるうちは買わなければ、と思ってしまいますね。暖かくなってくると終わりを迎える菜の花、お早めに。
おすすめの美味しい食べ方があれば教えてください!
この記事を書いた人
編集長 まぐ(やまぐち あつこ)
現役ワインソムリエ、元病院管理栄養士。大阪在住の30代独身。
20代は病院、福祉施設、イタリアンバル、八百屋などで掛け持ちもしつつ馬車馬のように働き、30歳からソムリエとしてイタリアンレストランで勤務中。興味あること多すぎの器用貧乏。#まぐの台所
参考
旬の食材百科
薬膳食典 食物性味表 / 日本中医食養学会 編著
厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)策定検討会報告書 各論 ビタミン(脂溶性ビタミン)
基礎からしっかり学ぼう!管理栄養士国家試験の要点/栄養セントラル学院
カロリーSlism