暑さ寒さも彼岸まで…彼岸って何?【お彼岸から始まる秋冬のセルフケア】
春彼岸と秋彼岸。それぞれ「暑さ寒さも彼岸まで」という慣用句のある通り「季節の変わり目なんだろうなぁ」ぐらいの知識はありますが、いざ「お彼岸って何?」と聞かれるとうまく答えられない。
今回はそんなお彼岸について、そしてこの時期のセルフケアについてお伝えします。
お彼岸って具体的にいつなの?
お彼岸とは春分の日、秋分の日を中日とする前後3日の7日間とされています。いずれも国民の祝日でおなじみですね。
「国民の祝日に関する法律」によると、春分の日は天文学上の春分日(年によって日付は変わる)とし、 「自然をたたえ、生物をいつくしむ」日とされています。…え、めっちゃ素敵やん!
また、秋分の日は天文学上の秋分日とし、「祖先をうやまい、なくなつた人々をしのぶ」日とされています。これまた素敵やん。今年は9月23日(木)です。
詳しくは国立天文台HPで確認することができます。
太陽は星々の間を移動していて、その通り道を「黄道」といいます。また、地球の赤道を天にまで延長したものを「天の赤道」といいます。黄道と天の赤道は、お互いが傾いているために2点で交わり、その交点のうちの一方を「春分点」、もう一方を「秋分点」と呼びます。そして、太陽が春分点・秋分点の上を通過する瞬間がそれぞれ「春分」「秋分」と定義され、「春分」「秋分」を含む日のことを、それぞれ「春分日」「秋分日」と呼ぶのです。
国立天文台HPより
黄道とか懐かしいなぁ。
仏教的なお彼岸のすごし方

そもそも「彼岸」という言葉は仏教用語。
「此岸(しがん)」…煩悩&迷いの世界。三途の川のこっち側。
「彼岸(ひがん)」…悟りの世界。三途の川のあっち側。
とされています。
そのため、元々は彼岸は極楽浄土へ行けるための修行をする期間だったらしいのです。極楽浄土は西にあると考えられていて、ちょうど先にあげた通り天文学的にも太陽が真西に沈むことも由来しているのでしょう。
でも、先祖に思いを馳せるお彼岸という文化はあまたある仏教国の中でも日本だけのものとのこと。元々あったお日様や自然を崇拝する文化などと結びつき、今の「お彼岸」になっていったと考えられているようです。
仏教的なお彼岸のすごし方と言えば仏壇仏具のお手入れ、お墓参り、お供え物など。忘れてしまいそうになるこういったご先祖様に思いを馳せる時間を季節の変わり目ごとに思い出す意味でも、お彼岸の文化は定着していったのでしょうね。
お供え物といえば、ぼたもち&おはぎ

ぼたもちとおはぎは、それぞれ春の花である牡丹、秋の花である萩にちなんだもの。
一般的にぼたもちはこしあん、おはぎは粒あんで作りますが、これには理由があります。
小豆の収穫時期は秋。まだ皮の柔らかい小豆は皮を残した粒あんに、春の固くなった豆はこしあんに、とされたようです。
最近の小豆はいつ食べても柔らかくておいしい気もするので、粒あん派の私は嬉しいのですが!
また、落雁
が添えられることもあります。お茶請けとして日持ちするのがいいですね。
最近驚いたのが、「映える」おはぎも増えてきているらしい、ということ。
百貨店では「え、これおはぎ?」と思うようなものもたくさん。和菓子界も生き残りをかけたアイデアがたくさん出ているんだなぁ…。伝統的な和菓子もいいけれど、カラフルなおはぎも食べてみたい!
秋はなぜかセンチメンタル…理由がある?
漢方や中医学(中国の伝統医学)では、「陰陽(いんよう)」という考え方があります。バランスの医学、と言われる東洋医学の考え方をわかりやすくするために考えられた概念、というイメージでしょうか。
▼詳しくはこちらの記事で▼
この陰陽を、目に見える形で表現したのがこの図。

(※この図でいう「陽気」は温めてくれるエネルギー、
「陰気」は冷ましてくれるエネルギー、というイメージ。)
ここまでにお話しした「春分」と「秋分」は、この陰陽のちょうど切り替わるとき。
バランスがとれているように見えますがいわゆる季節の変わり目でぶれやすい時。暑さ寒さも彼岸までとはいうものの、秋のお彼岸はまだ暑さが残っていたり、かと思えば朝晩は冷えてきたり…。心も夏の解放感から秋の閉そく感へと移り変わって、なんだかモヤモヤしたりすることもあるかもしれません。
そういえば私は昔からこの季節の空気の香りを感じるとなんだか胸がモヤモヤそわそわしますが、陰陽の変わり目を感じているのかもしれません。
お彼岸は「養生」に目を向けるタイミング
お彼岸は、精進料理を食べるという文化もありますが、これは実は食養生としても理にかなっています。
夏はついついモリモリ食べたり、冷たいもののがぶ飲み、アイスクリーム…いつのまにか胃腸のキャパを超えていることがあります。
この、胃腸の弱りや冷えを秋や冬まで持ち越すと、あらゆる不調の原因に。これからの季節をごきげんに過ごすためにも、精進料理とまではいかなくても「油っこいもの、甘いもの、アルコール類、味の濃いもの(すべて”あ”からはじまりますね)」などの胃腸に負担のかかるものを控えるのは立派なセルフケア。冬の体調が変わってきます。
お彼岸はご先祖様へ思いを馳せるとともに、体を「夏モード」から「秋冬モード」に切り替える時期ととらえて、ちょっと体をいたわり、ごきげんな秋冬を過ごしたいですね。
この記事を書いた人
編集長 まぐ(やまぐち あつこ)
現役ワインソムリエ、元病院管理栄養士。大阪在住の30代独身。
20代は病院、福祉施設、イタリアンバル、八百屋などで掛け持ちもしつつ馬車馬のように働き、30歳からソムリエとしてイタリアンレストランで勤務中。興味あること多すぎの器用貧乏。#まぐの台所